ほうーーーなるほど。


山路を登りながら、こう考えた。

智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。

とかくに人の世は住みにくい。

住みにくさが高じると、
安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、
詩が生れて、画が出来る。

人の世を作ったものは
神でもなければ鬼でもない。
やはり向う三軒両隣りに
ちらちらするただの人である。

ただの人が作った人の世が
住みにくいからとて、越す国はあるまい。
あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。

越す事のならぬ世が住みにくければ、
住みにくい所をどれほどか、寛容て、
束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。

ここに詩人という天職が出来て、
ここに画家という使命が降る。
あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、
人の心を豊かにするが故に尊とい。

住みにくき世から、
住みにくき煩いを引き抜いて、
ありがたい世界を
まのあたりに写すのが詩である、画である。
あるは音楽と彫刻である。

こまかに云えば写さないでもよい。
ただまのあたりに見れば、
そこに詩も生き、歌も湧く。
着想を紙に落さぬとも
璆鏘の音は胸裏に起る

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We look before and after
And pine for what is not:
Our sincerest laughter
With some pain is fraught;
Our sweetest songs are those that tell of saddest thought.

前をみては、えを見ては、
物欲しと、あこがるるかなわれ。
腹からの、笑といえど、苦しみの、そこにあるべし。
うつくしき、みの歌に、

悲しさの、極みのるとぞ知れ


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ねー?




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3 件のコメント :

  1. -

    昨日、上 5行の話を
    ほんの一瞬だけして

    その後を読みたくなったので。


    ※ 著 者:夏目漱石 「草枕」
    ※ コピペ:セバヌチャソ

    -

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