うしろの一円玉。



「すみません。」

横断歩道の信号待ちで振り向くと、
そこには制服にランドセルの少年がいた。
この近所では見かけない制服で黄色い帽子を被っていた。

「お金落とされましたよ。どうぞ。」

少年がボクに手を差し出す。
「あっ、ありがとう。」

1円玉だった。

朝起きてすぐ家の前の煙草の自動販売機に
向かう途中のことで頭がボーとしていた。

仕事の事で頭がゴチャゴチャだった。
横断歩道を渡り何となく振り向くと
もうそこに少年はいなかった。

その一円は、まだ持っている。

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